CBNの記事

禍を転じて福と為す-クライストチャーチのレストラン事情-

クライストチャーチのシンボルである大聖堂を崩壊させ、市中心部を壊滅、死者185人を出した未曾有雨の2011年2月22日のカンタベリー地震より2年が経過しました。地震直後は、皆、目前のことで精一杯でしたが、その後、徐々にEQC(Earthquake Commission)による建物調査や修理が進み、解体や新築工事も始まり、徐々にクライストチャーチ市民にも心のゆとりが生まれてきました。

「腹が減っては軍が出来ぬ」ではありませんが、人間、どんな時にでもお腹は空くし美味しいものを食べたいもの。しかし、これまで市中心部に集中していたレストランは大半が被災し、現存するレストランはどこも予約でいっぱいで食事にありつけないという、圧倒的なレストラン不足の状況が顕在化しました。
そんな需要に応えるべく、地震後、2件のレストランの新装工事の依頼を請けました。いずれも、元々市中心部でレストラン経営に携わっていた施工主の依頼でした。
施工主は地震と共に職場を失い、そのため金銭的・時間的に余裕がなかったため、建築面でのアドバイスをしながら一緒に施工工事を行い、今現在は順調に営業しています。
かつて地震前にも、5件のレストランの新・改装工事に携わりましたが、建築法としては目立った改変はないものの、これまで見て見ないふりをしてきた細部までもが厳しくチェックされるようになりました。

グリース・トラップや換気扇の設置、障害者用アクセス、及びトイレの設置、レストランの規模に対する駐車場の確保をはじめ、Fire Reportが厳格になり、避難出口の確保と明確なサイン表示、スモーク・アラームやスプリンクラー、消化器の設置は必須事項です。
又、地震後、CERA(Canterbury Earthquake Recovery Authority)により、TC3ゾーン(大きな液状化が認められた地域)に区分けされた地域は、建築許可が大変厳しくなりました。Engineer Reportの取得が求められますが、これは建物の持ち主(大家)の義務です。

難点としては、建物に対する基準が厳しくなったため、建物の持ち主(大家)の責任に委ねられる部分が大きくなり、大家が迅速に行動をしてくれないことには店子の仕事が進められない、又、City CouncilのBuilding Consentの熟練担当者が地震の仕事に手を取られているため、知識のない新参担当者が増え、そのため返答が要領を得ず作業が円滑に進まないなど、事務に要する時間が長くなったことが挙げられます。

かつての市中心部は、信じがたいほど老朽化が進み、又、素人仕事で闇雲に増・改築を重ねた古い建物が軒を並べていて、日本に長く住んでいた私は、いつか地震が起こり大惨事を招くだろうと常々懸念し警告をしておりましたが、心配過剰だと一笑に付されました。

しかし実際に地震が起こり、-禍転じて福と為す-これまでの危険極まりのない古い建物が一掃され、建築基準が上がり、建物の安全に対して真剣に考えるようになりました。
クライストチャーチはこれから少なくとも10年は街の復興事業が続くと言われています。
新たな労働移民が転入するため経済が活性すること間違いなく、新規の店舗物件も続々と建築中で、今まさに新しいビジネス・チャンスの宝庫です。
又、本当に危険な建物はすべて倒壊してしまったため、ある意味、今現在、世界で屈指の安全な街ではないでしょうか?
クライストチャーチで、新たに新規レストラン事業を考えていらっしゃる方、お気軽にお問い合わせください。

Share this Post!

関連記事

TOPへ